中東のアニメ
イラン国外で作られたはじめてのアニメ
-アメリカに住むイラン人たちの悩みと活動
大文字焼き、京都の五山送り火に、毎年多くの人が募り、テレビでも中継される。ご先祖様を供養するお盆の時期は、外国人の私にとってラッシュアワーでも空いている電車と休める時期である。仏壇のある日本の家で、イエス・キリストの復活祭にちなんでイースター・エッグを作ったり、お祝いのカードを送ったりすることはピンとこないのと同じだろう。やはり、幼いころに、茄子と胡瓜の牛馬を作り、家族を含む地域で迎え火と送り火の行事に参加しないと身につかないかもしれない。
イラン人の家に生まれ育つアメリカ在住のバーバク君、8歳もイースター祭の予定で盛り上がるキリスト教の友人らに違和感がある。彼は「バーバクと友人たち」というアニメのヒーローだ。米国で製作され、昨年からDVDで販売されたこのアニメは、イランの核濃縮が注目されることもあってか、BBCやCNNなどで取り上げられてきた。核濃縮がバーバク君を有名人にしたのか、その逆か・・・。
バーバク君の物語は次のように続く。イースター祭と時期を同じくし、イランから同じ年ころのいとこたちが遊びに来る。イランの文化が突然濃くなった家の雰囲気に戸惑いながらも、イランの正月、ノールーズが近づき、いとことたちとその準備をする。
子供たちに古代のイラン、ペルシアの文化を教えてくれるのは、世界遺産にも登録されているアケメネス朝時代の古代遺跡、ペルセポリスの壁に描かれている一人のおじいさんだ。本来なら、あごひげの長い一人の兵隊のレリーフだが、このアニメではノールーズを紹介するおじいさん役として登場する。バーバクがイランの文化や習慣を学ぶと同時に、いとこたちとのわだかまりもなくなる。
このアニメをダスタン・アリスというイラン人の母とアメリカの父を持つ監督が製作した。幼いころバーバクと同じ体験をしたのであろう。イラン国外で、イランのアニメが作られるのははじめてのことだ。また、声優には、2003年の米国映画「砂と霧の家」でアカデミー助演女優賞にノミネートされたショーレ・アグダシュルーが登場する。彼女は、イラン出身の女優で、中東出身の俳優としてはじめてアカデミー賞候補となった人物だ。英語とペルシア語の両言語での出演も珍しいことだろう。
日本の技術の高いアニメをたくさん見た所為か、子供たちの表情や動きがもう少し極めてほしいと思いつつも、父や小父がむっとした顔には、なぜか納得がいく。久しぶりに再会した姉妹だが、その夫たちがそれとなく距離を保っているのは、なんとなくイランの家庭ではありえる話だ。大掃除も含め、イランの家庭では、一年で一番大きい祭り、ノールーズを題材にしていることも、イラン人の私にピンと来る。
ネットでこのアニメの評価を調べてみたが、意外にもペルシア語でのコメントはそれほど多くない。アニメの広報担当者がメディアの取材に、在イランの子供たちの英語教材になるように期待していると言っていたが、もしかしたら、海賊版が出回るイランでは、ディズニーなどのアニメに勝てなかったのかもしれない。しかし、イランの文化の紹介においては、ライバルが少ないので、米国などの図書館が多く購入したそうだ。
アニメの続編も計画中とのことだ。新しいアニメには韓国系やインド系、黒人の子供たちも登場する。移民社会の米国では、移民たちがどのように互いを理解しているのかに焦点当てるそうだ。もし、バーバク君が日本に住んでいたのなら、お盆の時期に合わせた物語になったのだろうか・・・ふと想像してしまう。
◊「バーバクと友人たち」のリンク・アドレス http://www.babakandfriends.com/babak/
アレズ ファクレジャハニ (東京外国語大学産学官連携研究員)


